労働審判のための証拠集め

証拠集めに使用するメモ帳とボイスレコーダーとペン
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こんにちわ、コウです。
前回は解雇権濫用法理について解説させていただきました。

いよいよ筆者の労働審判体験談が火を吹く!・・・といきたかったのですが、証拠集めについては早めにお伝えしておきたいなぁと思ったので、先にこちらを詳しく書いていきたいと思います!



1.労働審判で必要になる証拠

解雇・雇い止めで労働審判を考えていらっしゃる方の場合、やはりその理由や手続きの不当性を証明するようなものを積極的に残していった方が、審理では有利に働きそうです。

まず一番に残しておきたいのは解雇(雇い止め)理由証明書です。

前回の記事3でも少し書かせていただきましたが、どんな理由で解雇(雇い止め)されたのかをはっきりさせれば、会社はそれ以外の理由を主張できなくなります。

会社から雇い止め理由証明書を発行してもらえない事もあるかもしれませんが、そういうやりとりをメールで行なえば、「会社がちゃんと対応してくれなかった」という証拠にする事もできます。

できれば就業規則も見せてもらって、後から確認できるようにこっそりデータにして保存しておきましょう。(就業規則を従業員に周知させることは労働基準法でも定められている義務なので、会社は拒否できません。)


あとは人事評価賞与計算業務日報など、勤務状況がわかるものがあれば残しておきましょう。
「能力不足」「ミスが多い」「協調性がない」などを理由にしているのに、それらに何ら反映されていないのならば、証拠として有力になりそうです。


他には、解雇や雇い止めに関する面談や話し合いなどの音声を録音しておきましょう。
退職強要悪質なハラスメントがある場合は特に有力になるので、普段から上司がパワハラ気質だったり論理がめちゃくちゃになっている事が多ければ、思わぬ証拠になるかもしれません。

ちなみに2022年4月に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が全面施行されたばかりなので、こちらもぜひ一度お読みになってください。

もし労働組合や労働局に相談している場合は、そこで相談をしたという証拠(現地でもらったリーフレット等)があれば、解雇や雇い止めに対して納得していなかったという証明になりそうです。

2.実はそんなに証拠提出はしないかも

ただ不当解雇・雇い止めの労働審判の場合、労働者側から証拠を提出する事はあまりないかもしれません。

一つは、解雇・雇い止めが有効であることを立証する責任は会社側にあるからです。
こちらから証拠を出さなくても、会社側が「こういう理由でクビです」と証明できなければ、その解雇・雇い止めは正当な理由がなかったということになるわけですね。

それが出来るほど普段の労務管理がしっかりしてる会社ってそんなにないでしょうし、クビになるくらいの理由がある労働者もめったにいないでしょう。
そもそもあったら「会社を訴えたい」なんて思わないですし・・・。

もちろん会社が嘘をでっちあげる可能性もありますが、申立から1回目期日までの約1ヶ月間で、いつも通りの業務を行ないながら辻褄の合う嘘答弁書を提出するというのは、なかなか至難の業だと思います。


もう一つは、決定的な証拠にはならないものが多そうという点です。

筆者の場合、面談内容を録音したり上司とのメールのやりとり等を残しておいたりしたのですが、担当された弁護士さんいわく「第三者から見るとなかなか事情がわからない」とのことで、結局裁判所に証拠としての提出はしませんでした。

前述の音声の録音も、証拠としてというより受任していただく弁護士さんに事情を理解していただいたり、自分が過去のやりとりを正確に把握するためという意味合いが大きかったです。


コウ
コウ

ただ、もしかしたらケースによって証拠として有力になる場合もあるかもしれないので、なるべく残せる記録は残していきましょう~



3.不利になる証拠

それから、こちらにとって不利になる証拠は残さないという事にもご注意ください。

特に退職届不更新条項入りの労働契約書にはサインしちゃ駄目ですよ!
目上の人に圧をかけられるとつい書いてしまいそうですが、こういった書類は一度書いてしまうと後で撤回するのがなかなか難しいらしいです。
労働審判でも当然、会社は「ほらね、あなたも退職に納得してたでしょ?」と、これらを証拠として出してきます。

少なくとも労働局のあっせんで撤回させることは厳しそうです。(後に詳しく記事に書く予定です。)
会社になんとしても残りたい方の場合はココが生命線と言っても過言ではないかと・・・。

もし既に提出してしまっている場合は、早めに弁護士ポータルサイトや法律相談サービス等で相談して、対処法があるか訊いてみましょう。

※ちなみに筆者はこの不更新条項入りの労働契約書(2つ目)にサインしてしまったのですが、弁護士さんのご助言のおかげで、何とか契約更新の合理的期待を保つことが出来ました・・・。また別の記事で詳しく書く予定です。


他には、例えば解雇理由が「ミスが多すぎる」だったとして、それについて上司に始末書や反省文を提出していた場合、会社側がそれを証拠として出してくる場合があります。

労働者としては、何とか上司に許してもらいたくて「すべて私が悪かったです」「大変なことをしてしまいました」等ちょっと大げさに書いてしまいがちです。
でも事情をよく知らない第三者が見ると「本人も解雇に納得しているのでは」という風に捉えられてしまうかもしれません。

また逆に、ふてくされたような言葉遣いをしていたり、売り言葉に買い言葉のような書き方をしていないかも要チェックです。


コウ
コウ

筆者も実際、反省文を証拠として出されてしまいました・・・



もしまだ在職中であれば、事実や本意でない事は決して認めない実際にミスがあったとしても過剰に謝らない、反抗的な言葉をなるべく使わず、どうしたら業務をうまくこなせるか等、改善する姿勢や誠実な対応を示すことが大切だと思います。

4.証拠の記録方法

色々と道具はありますが、ちゃんと記録ができれば手近な物で良いかと思います。
以下に筆者が実際に使ってみた感想とオススメ品を書いていきます~。


<手帳>

場所を問わずすぐ記録できるので、何だかんだ使えます。
仕事中、持ち歩いてても怪しまれないのも良いですね。
けっこう不意打ちで「あ、今のやりとり記録しておきたい」って思っちゃったりしますからね・・・。

スケジュール帳タイプで、ペンが差し込めるもの、余白やメモ欄の多いものがオススメです。


月間ページはスケジュール週間ページは日記としてそれぞれ使えるのでオススメ。

画像を見たところペンホルダーもついてそうです。



方眼タイプで、こちらもなかなか使いやすそう。




もし証拠として提出することをお考えの場合は、こちらのサイトも参考になります。
その場合は、普段使っている手帳とは別に購入しておいた方が良さそうです。


証拠価値を上げるために公証役場で確定日付をつける、という方法もあるみたいです。(リンク先の3「証拠を集める」部分)



<ボイスレコーダー>

面談時の記録として定番のアイテムですね。
筆者は無料スマホアプリの「簡単ボイスレコーダー」を使用していました。
スマホにデフォルトで入っていた動画アプリだと電池の消費が激しく容量も大きいので・・・。

ズボンのサイドポケットや、手帳の下に忍ばせて面談の声を録音していました。
デフォルト動画アプリと違って録画中のランプが光ったりしないし、大体の声は聞き取れるんですが、再生してみたら若干音量が小さくて・・・もともと声の小さい人やボソボソ声だと、最大音量にしても一部聞き取れなかったりしました。
雑音も結構入っちゃうので、文字起こしをした時はちょっと苦労しました・・・。

お金に余裕のある人は、性能の良いボイスレコーダーを購入した方が良いかもしれません。


Voice Trekというシリーズが一番種類も豊富で定番のようです。


こちらはボールペン型のボイスレコーダーで探偵気分になれそうです。

もはや労働審判関係ない





<スクリーンショット>

会社でのやりとりなどを会社パソコンやスマホでスクショしまくっていたのですが、結構役に立ちました。
最近はコロナの影響でパソコンでのやりとりが増えているかと思いますし、業務上のやりとり・自分や上司のスケジュールなんかも保存しておくと、労働審判で会社がその話題を持ち出してきた時に参照できます。
特に会社が答弁書で嘘をついてきた時なんかは、してやったりですね。

証拠としても使えるように、トリミングや加工等はしない方が良さそうです。

ショートカットを覚えれば、仕事中でもササッと保存ができます。

iPhone・・・ホームボタン+電源ボタン、もしくはサイドボタン+音量アップボタン
◇Android・・・電源ボタン+音量ダウンボタン
Windows・・・〔Windows〕+〔PrintScreen〕
Mac・・・〔⌘〕+〔shift〕+〔3〕

会社から追い出された後は見られなくなる場合が多いと思いますので、クラウドやUSBメモリで私物のパソコンなどに移動しておくのをお忘れなく。




<私物のスマホカメラ>

文字で説明しにくいものは、やっぱりスマホカメラが一番です。
弁護士さんや裁判官に事情を口頭で説明する時や、会社に突然書類を渡されて対処に困った時などにメールですぐ画像を送信できます。



<USBメモリ>

会社パソコンに入ってる資料やデータを移す時に、一番手っ取り早いのはUSBかなぁと思います。
クラウドでも良いですが、ログインしたりコピペしたりする時にちょっと怪しまれそうですし・・・。


データの保存や移動用途なら、このくらいの容量で十分かなぁと思います。
音声データなしなら、もっと安いのでも良さそう。


今後も使い続けていくなら、ちょっと性能良さげな物を。






コウ
コウ

実際に使用する証拠はごく一部ですが、何が重要な資料になるかは専門家でないと分からないと思うので、審理を有利に進めるためにも証拠はたくさん残しておきましょう~







上司とパソコンでのやりとりで衝突する社員


ガベルと天秤と積まれた本

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