
~前回までのあらすじ~
上司Aを怒らせ、社長・人事Bに相談される事態となってしまった筆者。
反省文を提出してしばらくすると、上司Aから「1週間後、契約について話をする」と返事がきました。
契約終了
実はこの時ちょうど契約更新の時期が近づいていました。
現行の契約が、あと1ヶ月ほどで満了になります。
筆者「(契約の話ってことは、期間満了を言い渡されるのだろうか・・・)」
不安でしたが、ネットで色々と検索していたので覚悟はそれなりに出来ていました。
とにかく契約終了を認めるような書類を出されたら、何がなんでも拒否しなければ・・・。
そして当日。
再び上司Aと2人で、会社の会議室で面談です。
上司A「次の契約は1ヶ月、「契約の更新なし」という内容になります。」
筆者「(やっぱりか・・・もうすぐ契約切れるからちょうどいいやーとか思ってんだろうな。)」
若干想定していた形(現行の契約で終了)とは違いましたが、案の定契約終了を言い渡されました。
事実上の雇い止め通告です。
もちろん納得いかないので雇い止めの理由を確認してみると、「言い訳を言ったり人のせいにするから(←自分が言わせたのに)」「指示をどう解釈するか分からない(←自分はお気持ちヤクザみたいに誤解釈しまくりなのに)」と言われました。
こちらが書いた反省文は、上司Aの胸には一ミリも響かなかったようです。
契約書を拒否
とりあえず「契約の更新なし」という不更新条項が入っていたので、契約書は拒否。
今までと同じ内容の契約書を求める旨を伝えました。
※不更新条項・・・契約期間が満了した時に更新しないことを、あらかじめ合意しておく条項のこと。
上司Aは少し驚いた表情をして、社長や人事Bと相談すると言い、その日の面談は終わりました。
おそらく提示した契約書をこちらが断るとは思ってなかったんでしょうね。
不更新条項の部分を目視で確認しようとした時も、自分がクビにさせてるのに「お気持ちお察しします」みたいな表情をしていたので、あちらが自分の事をどんな風に思っていたのか手に取るようにわかりました。

ホント、馬鹿にしてるわ
面談の数分後、所用で会社の受付付近を通ったら、何やら上司Aが人事Bとコソコソ話をしていました。
どうやら筆者が契約書を拒否した事について話しているようです。
何となく雰囲気で「あぁ、これは人事Bも同じ穴の狢かなー・・・」という感じがしました。
後に、その予感は的中することとなります。

[番外編]不更新条項入りの契約書に要注意
ちなみに体験談に出てきた不更新条項入りの契約書ですが、有期雇用契約を結んでいる人にとってはかなり重要なポイントかと思います。
立場の強い人から「こうしろ」と言われてしまうと、本心では納得していなくてもOKしてしまうって事がありますよね。
会社はこの心理を利用してか、雇い止めをする時に不更新条項入りの契約書にサインをさせて、雇用継続に対する合理的期待がなくなったと主張してきたりするんです。
もちろんそれが正当な雇い止めであれば、リスク回避のための有用な手段であり、労務管理として適切だと思います。
でも、正当な理由のない雇い止めでこんな事をしてたら、労働者の弱みに付けこんでるようなものですよね・・・。
契約書にサインしたと聞くと「もう駄目なんじゃないか」ってイメージが強かったりしますが、実はそれだけでは合理的期待がなくなったとは言えないみたいです。
本心からの合意ではなかったとわかる証拠を残しておけば、たとえサインをしていても、ただちに「合意していた」とは見做されません。(→別記事で不更新条項に対する対抗策を載せております。)
以下の判例では、雇い止めは困ると述べたこと、労働局に相談していたことが重要な要素の1つとなったようです。
博報堂事件(福岡地判 令和2年3月17日)→雇い止め無効
平成29年2月、Y社は、契約更新前の面談において、平成30年3月をもって契約は終了する旨をXに伝え、同年3月、不更新条項付きの雇用契約書をXに渡した。Xはその場で署名押印せずに契約書を一旦持ち帰り、後日これに署名押印してY社に提出した。Xは、福岡労働局に電話で相談し、平成29年12月、Y社代表者宛てに、雇用継続の希望と雇止理由証明書の送付依頼等を伝える書面を送付した。Y社は、同月、Xに対し、更新限度を毎年契約書に記載してきたこと、事務職契約社員の業務は標準化合理化して再構築すること等を記載した書面を送付した。福岡労働局長は、平成30年3月9日、Y社に対し、無期転換回避を目的とした無期転換申込権発生前の雇止めは労契法の趣旨に照らして望ましくないため慎重な対応を求める旨の助言をした。
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/taisyoku/yatoidome.html
契約終了の合意の認定には慎重を期する必要があり、Xの明確な意思が認められなければならない。不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印の拒否は、Xにとって契約が更新できないことを意味するから、契約書への署名押印から直ちに、Xが契約終了の明確な意思を表明したとみるのは相当でない。むしろ、Xは、雇止めは困ると述べ、労働局に相談するなどの行動をとっている。以上からすれば、本件雇用契約は合意によって終了したものと認めることはできず、Y社は、契約期間満了日にXを雇止めしたものというべきである。
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/taisyoku/yatoidome.html
既にサインをしてしまっていたら、早めに会社側へ「やっぱり不更新条項には納得できません」など、証拠に残るかたちで伝えることが大事かなぁと思います。
また、もし不更新条項入りの契約書についてちゃんとした説明を受けていなかったり、詐欺みたいな事を言われていたとしたら、そちらもしっかり証拠に残るかたちで「契約締結の時に説明がなかったですよね?」「あの時はこう言ってましたよね?」と反論しておくと、審理で有利に進められるかもしれません。
もし「早くサインしろ!」「サインしないなんて馬鹿なの?」など、強迫・誹謗中傷のようなことを言われていたら、完全にアウトですね。暴力は言わずもがなです。
会社によっては、労働者が法律の知識を持っていないことを利用して、平気で法律を無視したり、都合の悪い部分は知ったかぶりをしたりするかもしれません。
そういった行為が見られたら、すかさず反論・証拠残しをしていきましょう。

対策を練るのが早いほど、後々対処も楽ですよ~

